『葱一本二十五円 ところがお燈明用の小蠟燭が二百本入りで五十五円だ 昭和四十六年十二月二十日のことだ』(「サングラスの蕪村」田中冬二)。
年末は何やかやと買い物が多い。物の値は上がっていて、スーパーで買い物をして、レジで会計をすると、思っていたより支払いの金額が多くて、驚いて財布にお金があったかしら? とうろたえることがしばしばでてきた。
前記は五十五年前の葱と小蠟燭の値段。今は、葱一本一七一円。最高級小蠟燭一二六本入り四五八円だ。
前記の田中冬二詩集の中に、『臨時財産申告書 昭和二十一年三月二十三日 郡山市にて』がある。本人や家族の預貯金残高が記されている。例えば、七〇六円 長女など。公社債株式の欄には、大東亜特別国債 四〇〇円。銀行株 五〇〇〇円とある。総計 一一,三七〇円。土地建物、書画骨董、宝石類は有さないとある。当時彼は銀行の支店長。
他人の懐状態にあまり興味はないが(少しはある)、今、統計で示される給与平均値や中央値等の数字は高めで、私の生活感と違う。
『しかし私は貧しくとも失わざる無形の財産があった それは詩精神と妻子への愛であった』と彼は結んでいる。
皆様、今年はお世話になりました。