米紙ニューヨーク・タイムズがこのほど発表した旅行先「2024年に行くべき52カ所」のうち山口市が、4月に皆既日食の見られる北米大陸、オリンピック・パラリンピックの開かれるフランス・パリに続き、3番目に紹介された。世界各国のライターが推薦した都市の中から同紙の編集部が選ぶもので、山口市は日本在住の作家で写真家のクレイグ・モドさんが紹介した。クレイグさんはその前年には盛岡市を推薦し、2番目に掲載されてもいる。
紹介内容は、「山口市は『西の京都』と呼ばれることが多いが、単にそう呼ぶよりもはるかに興味深い」とし、国宝・瑠璃光寺五重塔、曲がりくねった小道でのさまざまな体験、洞春寺境内にある陶芸工房「水ノ上窯」、「LOG COFFEE ROASTERS」「COFFEEBOY 山口店」「原口珈琲」などのコーヒーショップ、おでんや鍋料理を提供するカウンターだけの飲食店、湯田温泉街、小規模ながら600年の歴史がある山口祇園祭などを、その魅力として挙げた。
クレイグさんは、自身のウェブサイト(https://craigmod.com/ridgeline/177/)で山口市を推薦した理由について「日本中を何千キロも歩いてきた私は、小さな村が消えていくのを見てきた。一方では喧噪(けんそう)に満ちた東京を見、そこで暮らしてきた。山口や盛岡のような都市は、やや持続不可能な田舎と、絶え間なく続く巨大都市との間に位置している(東京が1階層、金沢や広島が2階層だとすると、3階層もしくは4階層)。山口のような都市では、温かいコミュニティの範囲内で人々が活動し、自らの小さな貢献が周囲の人たちの生活に有意義に積み重なっていくのを感じながら、人間的なスケールで充実した生活ができる。数十年の歴史を重ねた小さな店と、若い人が始めた活気ある店が共存し、適切なバランスを保っている」と説明。さらに、2020年3月に初めて山口を訪れて萩往還を歩いたことや、翌2021年11月に再訪したこともつづっている。推薦文に登場した以外にも、「お茶の鴻雪園」、常栄寺、中原中也記念館、「JAZZ SPOT ポルシェ」、喫茶店「チュラム」を紹介した。
記事中に登場した山口祇園祭は、八坂神社(山口市上竪小路)の祭礼。同神社の小方礼次宮司は「歴史を積み重ねた山口祇園祭が、外国に住む人だけでなく、国内、そして地元山口の人たちに認識してもらうきっかけになればうれしい。また、当日の見学者だけでなく、祭りに参加する人の増加にもつながれば」と期待を寄せている。
また、クレイグさんが来山時に訪問したカウンターだけの「かんたろうおでん」(山口市中市町5)を経営する三浦恵子さんは、山口の町並みを「戦災にあっておらずとてもきれいだ」と話していたことが記憶に残っているそうで「突然のことで驚いているが、山口市が世界的にクローズアップされたことを嬉しく思う」と話している。
ただ、記事に登場する瑠璃光寺五重塔は、2023年1月から2026年3月まで改修工事に入っており、2024年中にその姿を拝むことはできない。また、山口祇園祭のコロナ禍における縮小開催からの「復活」が2024年と書かれているが、実際には昨年に「復活」開催されている。