もし、私が「お星様がキラキラ光っている」。「真夏の太陽がギラギラと照りつけ」、「桃が川上からドンブラコドンブラコと流れてきました」、「雨がザアザア降っています」等と聞かされなかったら、私は星を見て、太陽を仰ぎ、絵本の桃の絵を見て、降りしきる雨を見て、なんと形容しただろうか。最初の発語はなんだったろうか。
毎夜星を見て、最初にキラキラという言葉が浮かび、子供じゃないんだからましな形容はないものだろうか、と考えこむ。ピカピカ? キンキラ? 弱い光りの星はチラチラで強い星はギラリか。キラキラと言えば皆だいたい思い浮かべる星空は同じだ。最初に覚えた言葉は、社会で生きていく共通語なのだろう。大きく道を踏み外さない言葉。
道を踏み外したいのだ。長く言葉を探している。最初の摺(す)りこみが強くて困っている。といっても絵本までで、文学全集が棚に並んでいる家に育たなかったので、誰でも読んでいるような古今東西の名作といわれるものを読んでいない。教養のないスッポンポンなのだ。知らないことは強みになる(こともある)。角を曲がると猛獣がいても、知らないのだから大胆に進める。時に顰蹙(ひんしゅく)を買うが、新鮮な発想だと褒められることもたまにはあるのだ。