2024年4月1日から「相続登記の義務化」が始まる。正当な理由がなく申請手続きを怠った場合には、10万円以下の過料が科されることになる。すでに相続が発生した不動産も対象になり、義務化から3年以内の2027年3月末までに登記手続きを行う必要がある。
相続登記とは
「相続登記」とは、亡くなった人から相続した土地や建物の名義を変更することをいう。名義を変更せずそのままにしておくと、いざ不動産を売却する時や、担保に入れて融資を受けようとする場合などに、手続きがスムーズに進まなくなる恐れがある。
また、放置している間に相続人が死亡してしまうと新たな相続が発生してしまう。その結果、何代にもさかのぼって相続人を特定する必要が出てくるなど、手続きの複雑化、長期化、費用の増加といった、さまざまなトラブルの原因にもなるので、注意が必要だ。
義務化の背景
これまでは相続時の土地や建物の登記は任意で、期限も罰則も無かった。そのため、「相続登記がされていないため、所有者がわからない」という所有者不明の土地が増加。その結果、森林整備の際に、森林所有者に伐採などの働きかけを行おうとしても、所有者に連絡がとれず進められない、自然災害が起こった際に被災地の復旧工事が始められないことなどが社会問題化していた。このような「所有者不明土地」問題を解消するべく、2021年4月に「相続登記の義務化」が法改正により成立した。
低い認知度
しかし、法務省が2023年12月に発表した新制度に関する認知度調査の結果によると、新制度の認知度は伸び悩んでいる。「相続登記の申請義務化」について、「よく知らない」「全く知らない」と答えた人は合わせて67.6%に上った。「正当な理由がなく申請手続きを怠った場合には、10万円以下の過料が科される」ことも、「よく知らない」「全く知らない」と答えた人は合わせて78.7%。2024年4月以前に発生した相続も義務化の対象になることは「よく知らない」「全く知らない」と答えた人は76.6%と、8割近くに上る。
◇ ◇ ◇ ◇
相続登記の手続きは個人でも行えるが、関係機関に平日に出向いたり、土地や建物の権利が複雑だったりすると、手続きが増えるうえ、時間と労力がかかることも。登記手続を正確かつ迅速に進めるには、専門家に任せると安心だ。下記の「くらしの法律家」である司法書士に相談したり、司法書士事務所が開催する相談会を利用したりして、早めの対策に取り組もう。