築五十年の古い家中にカレンダーを張り巡らせる。定番のトイレはもちろん、壁という壁に貼る。タンスの背にも、積み重ねた段ボールにも貼る。
おい、お前良く見ろ。一年はこれだけ、これだけだよ。わかっているのか。ー神の声が響き渡る。
A銀行のカレンダーはたった一枚。一枚に一年が詰まっている。二か月めくりのカレンダーは厚さ三ミリ。世界名所巡りは二ミリ。世界は戦火で燃えているのにこの軽さ。掌に乗る一年カレンダーの頼りなさ。気絶する。
おい、お前、もう二月も終わるぜ。それに今年は喜寿だぜ。大丈夫かよ。ー神の声が聞こえ、卒倒する。
からからと鳴る日々 坂田寛夫
一月二月は/よかったが/三月の花/四月に散り/もの憂い五月/なお六月/たくさんの日を/どうして埋める?/七月積んで父のため/八月積んで母のため/そのはてにまだ/九月 十月/力なげに飛ぶ蝶々/十一月に/石を投げる/からからと鳴る/十二月
花が散って気怠い梅雨、頭がもうろうとして一日は長い。何をしてもうまくいかない賽の河原。石を投げても空虚な音が響くだけ。こんな一年は長い。避けたい。神様お慈悲を。
万年猫語カレンダー。今日の猫語「そのうちそのうちより今のうち」。