山口市の2024年度一般会計当初予算案の総額は、前年度比14.9%増の1092億円で、初めて1000億円を超える過去最大規模となった。「物価高騰の影響への対応」と「防災・減災対策の加速化」に取り組むこととし、テーマには「ずっと安心 元気山口予算」と掲げられている。旧1市4町の合併による新市誕生から来年で20年を迎えるため、「新市のまちづくりの総仕上げ」とも位置付けられた。予算案は、2月16日から3月14日(木)までが会期の山口市議会に諮られる。
まず、昨年夏に発生した豪雨被害などを受け、災害治水対策のマネジメント機能を強化するため、市長部局と上下水道局の役割を整理・再編し「河川治水課」を新設。そして、2026年度の「雨水管理総合計画」策定に2億円を計上した。さらに、大内地域の問田雨水ポンプ場の整備に1億9900万円、移動式排水ポンプ設備等の増設に2億2964万円、高潮災害を想定した避難シミュレーション調査に3000万円などを盛り込んだ。
また、子育て家庭の負担軽減に向けて「高校生世代までの医療費無償化」(11億9373万円)、「第2子以降の保育料無償化」(1億441万円)、「1歳児健診の公費負担化」(644万円)、「おたふくかぜワクチン接種助成」(1100万円)、「学校給食費の公費負担拡充」(1億7084万円)などに取り組む。市立中における部活動の地域移行に向けては交流創造部内に「部活動地域移行推進室」を新設、1740万円を計上した。
市内におけるあらゆる産業分野の人材確保と移住・定住促進を一体的に進めるため、商工振興部内に「人材確保支援担当」を新設。中小企業等の重点的な人材確保支援(2186万円)や、事業承継支援(400万円)に取り組む。また、大学生・若者等の地元就職の促進に向け4510万円、新規就農者支援に6019万円を計上した。
そして、市役所本庁舎の建設には108億8857万円、湯田温泉パーク整備には31億9242万円、2026年度リニューアルオープン予定の道の駅「仁保の郷」の機能強化に5億7260万円、同じく「あいお」の移転整備(基本設計)に920万円、2024年度末リニューアルオープンの「重源の郷体験交流公園」改修には4億7830万円を盛り込んだ。
1月に米ニューヨーク・タイムズ紙が「2024年に行くべき52カ所」の3番目に山口市を紹介したことを受け、3月補正予算も含めて1億2850万円を緊急計上。「山口ゆめ回廊」公式ウェブサイトの多言語運用、同時通訳機器・フリーWi-Fi・キャッシュレス決済設備等の市内設置、インバウンド向けプロモーション動画の制作などを実施する。
歳入・歳出の概要
[歳入]
「市税」は、前年度当初比0.4%(1億2000万円)減の275億9000万円。法人市民税が2億8000万円、固定資産税も新築家屋の増加などにより1億9000万円の増だが、個人市民税が定額減税等の影響で6億9000万円の減が見込まれている。また、国からの「地方交付税」は、5.4%(9億2000万円)増の178億6000万円の見込み。財源不足を補うための「繰入金」は42.2%(21億円)増の70億8000万円で、市の借金に当たる「市債」は59.2%(75億3000万円)増の202億6000万円。どちらも新本庁舎の建設が、増加した大きな要因だ。
[歳出]
「人件費」は、給与改定に伴って給与が3億2000万円、退職手当が5億4000万円増加し、6.7%(10億3000万円)増の164億3000万円に。「扶助費」は、児童手当の拡充などから4.6%(9億1000万円)増の206億9000万円になった。また、新本庁舎整備と湯田温泉パークの事業費が増額したため、「投資的経費」は、62.4%(111億5000万円)増の290億1000万円と見込まれている。