2020年以降、全世界が新型コロナウイルスとの闘いに明け暮れた。しかし、その陰に隠れて終息しない感染症も数多くある。結核もその一つ。エイズ、マラリアと共に「三大感染症」の一つに数えられ、年間130万人以上の死者、1千万人以上の発病者を出す感染症の“トップキラー”だ。2030年までに結核まん延を終息させることは、国連の持続可能開発目標 (SDGs) の一つでもある。日本は、2021年に「低まん延国」(人口10万人あたり新規患者が10人未満)に位置付けられたが、欧米先進国と比べると、まだまだ罹患率は高い。また、山口県内での年間新規患者数は、10年前との比較で約100人減少。2021年以降は200人未満だが、コロナ禍をきっかけとした受診控えによるものとの指摘もある。
世界結核デーとは
細菌学者ロベルト・コッホが1882年3月24日に結核菌の発見を発表したことにちなみ、1997年のWHO総会でこの日を「世界結核デー」に制定。毎年WHOがテーマを掲げ、2024年は「Yes! We can end TB! (私たちは結核をなくすことができる) 」だ。この日は世界各地で結核の啓発活動が行われる。
どんな病気?
結核菌によって、主に肺に炎症が起こる感染症で、主な感染経路はくしゃみや咳による空気感染。初期症状は風邪に似ているため、気づかないうちに進行してしまうことがある。
発病しやすい人は?
県内における新規感染者は、60歳以上が7割以上を占めている。その一方で、外国生まれの若い患者も増加。国際化の進展により、この傾向はさらに進むと予想されている。
予防法は?
適度な運動、十分な睡眠休養、バランスの良い食事など健康的な生活が、感染症に対する抵抗力をつけるのに有効だ。そして、早期発見のためにも、市町村で行っている住民健診や職場等の健康診断を進んで受けよう。
治療法は?
一般的には、診断後6~9カ月間の服薬が必要。「症状が消えた」と自己判断で服用を中断すると、薬の効かない「薬剤耐性」ができやすくなるため、医師の指示に従い、決められた期間服薬を続けることが大切だ。
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結核は「過去の病気」との認識から、受診・診断の遅れにつながり、周囲の人々に広まる集団感染も起こっている。定期健康診断や治療には公費での補助が受けられるので、心配な時は近くの保健所に相談しよう。
早期発見・早期治療は、本人の重症化を防ぐだけではなく、大切な家族や職場への感染拡大を防ぐためにも重要だ。タンのからむ咳や微熱、体のだるさといった症状が2週間以上続く場合、下記に掲載の医療機関などを受診しよう。
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