2025年2月ごろまで、檜皮葺(ひわだぶき)屋根の葺き替えと木部修理作業が施されている、山口市唯一の国宝・瑠璃光寺五重塔。その屋根となる檜皮に、願い事や自分の名前を書くことができる「檜皮奉納書き」を、現在同寺では受付中。50年から100年に1度となる、屋根の全面葺き替え時でなければできない「一生に一度」の機会だ。
米紙ニューヨーク・タイムズが1月に発表した「2024年に行くべき52カ所」の3番目に紹介された山口市の記事中、瑠璃光寺五重塔は冒頭で紹介された。その反り返った美しい屋根を形成しているのが檜皮葺きだ。ヒノキの樹皮を使って施工する、飛鳥時代が起源とされる日本古来の屋根技術工法で、優美な曲線や軒の重厚感を出すことができる。多くの国宝や重要文化財等の屋根に使用されており、長野市の善光寺、京都市の清水寺、広島市の宮島厳島神社、島根県の出雲大社などもそうだ。
「檜皮奉納書き」は、同寺山門奥の庫裏にある総受付(TEL083-922-2409)が窓口で、奉納料は1束1万円。1束は、長さ約50センチ・幅約15センチに切りそろえられた檜皮30枚で構成される。最初に受付で、専用の封筒に住所・名前・奉納束数を記入。奉納金を納めると本堂に案内され、仏前で願いを込めて氏名などを記す。受付時間は、平日の午前9時から午後5時まで。奉納された檜皮は、風雨に直接さらされないよう、軒の奥の部分に使用されるという。
なお、遠方に住んでいる等の理由で直接参拝できない場合は、代筆してもらえる。奉納金は、現金書留または郵便振替(当座01310-7-113232、口座名「瑠璃光寺」)で納め、奉納者の住所・氏名・願い事とともに「檜皮屋根寄進」と書いて同寺(〒753-0081 山口市香山町7-1)に送る。
「あなたの書いたものがすぐに国宝の一部となるので、末永く当山や五重塔と法縁を結んでほしい。室町時代に建てられ、各時代の人々に受け継がれた瑠璃光寺五重塔を、令和の時代においても守り、皆さんと一緒に未来へつないでいきたい。さらに、この奉納が郷土愛の醸成にもつながれば」と渡邉博志住職。工期の関係もあり、奉納は5月末までが望ましいという。
改修工事は2023年1月にスタート。2026年3月末の完成まで、総事業費は防災設備の更新を含めて約7億6000万円と見込まれている。国、県、市の補助金を受けるものの、瑠璃光寺も約6000万円を負担しなければならない。奈良や京都など、観光地にある国宝級の神社仏閣は、拝観料を改修工事の財源に充てるのが一般的だが、無料で入場できる都市公園・香山公園の中にある同五重塔は、建物の中に入れる構造でもなく、拝観料を徴収できない。そこで、同寺総代会、山口観光コンベンション協会、山口商工会議所、山口七夕会の4団体は、クラウドファンディング(CF)を活用して資金を募った。2022年9月2日から11月30日までの第1期は、目標額2000万円に対して631万6000円(達成率31%)だったが、瑠璃光寺への直接寄付や期間中に開催された「特別拝観」の収入が約500万円に上り、合わせて約1100万円が集まった。2023年8月1日から11月30日までの第2期も、601万円で、達成率は30%に終わった。第3期のCFも予定されているが、開始時期は未定だという。3月18日には、萩山口信用金庫が300万円を寄付するなど、地元企業からの支援も寄せられてはいるものの、6000万円へのハードルは、依然として高い。
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