5月11日(土)に米ニューヨーク(NY)・マンハッタンで開催された今年の「ジャパンパレード&ストリートフェア」に、日本の自治体からは山口市が唯一参加した。本紙スタッフ1人も、山口祇園囃子(ばやし)保存会の一員として、訪米メンバーに加わった。現地での様子をリポートする。
山口市からNYに赴いたのは、伊藤和貴市長と市職員3人、山口観光コンベンション協会から2人、湯田温泉旅館協同組合からマスコットキャラクター・湯田ゆう子、そして祇園囃子保存会から10人の総勢19人。現地には、2組に分かれて1日違いで乗り込んだ。
保存会メンバーらは、9日(木)朝に山口宇部空港から羽田空港へ。同空港からNYへの直行便に乗り換え、日付変更線を越えてジョン・F・ケネディ国際空港に9日午前11時(日本時間10日深夜0時)に到着した。
翌10日(金)は、パレードの舞台となるセントラルパーク西側大通りの集合場所やルート、スタートまでの待機位置などを、時差ぼけとも戦いつつ確認していった。
10日夜には、ニューヨーク山口県人会主催の懇親会に、後発メンバーも合流して出席。同会の沼田忍代表世話人は、「山口市が『今年行くべき52カ所』の一つに選ばれたことは私たちも驚いた。これを機会に外国人観光客の受け入れ態勢を整え、山口県の魅力をもっと知ってもらい、『行きたい』と思ってもらえたら」とあいさつ。また、米国到着後にニューヨークタイムズ本社と在ニューヨーク日本総領事館を訪れた伊藤市長は「森美樹夫総領事からは、『アメリカの人たちに、日本の本当の文化や、中小の都市の魅力を理解してもらいたい』など伺った。あすは、山口市の魅力をしっかりアピールしたい」と意気込みを語った。保存会の真庭宗雄代表(71)が、ともに大殿小学校に通っていたサベッジ福田純子さん(70)と60年ぶりに思いがけず再会するといった一幕も。保存会メンバーは祇園囃子も披露し、参加した50人は楽しく歓談して交流を深めた。
催し当日の11日は、少し肌寒い晴天の下、沿道には約5万人の観衆が集まった。山口市の一行は、「山口七夕ちょうちんまつり」などがデザインされた「フロート」と呼ばれる山車(だし)に乗車し、99団体・約2500人が行進したパレード(午後1時~3時半)に加わった。伊藤市長、大庭達敏山口観光コンベンション協会理事長、湯田温泉マスコットキャラクター・ゆう子が前部に立ち、日本とアメリカの国旗を振りながら観衆の声援に応え、山口市をアピール。後部には祇園囃子保存会メンバーが、笛(能管)、締太鼓、鉦(しょう)の順に座り、「日和神楽」「立田」「月」の3曲を奏でた。さらに、ニューヨーク山口県人会のメンバー約20人も、胸に「I♡YAMAGUCHI」と描かれたTシャツを身に着けるなどして、フロートとともに練り歩いた。
また、おにぎり、たこ焼き、和菓子といった日本食の販売や、書道や折り紙など日本文化を紹介するコーナーが軒を連ねたストリートフェアにも山口市はブースを構え、PRグッズを配布した。「山口祇園」と書かれた手ぬぐい(100本を用意)がニューヨーカーに「ハチマキ」として大人気に。求める人で長蛇の列ができ、通りをふさいでしまったため、急きょ行列整理用のポールを並べるほどだった。そのまま頭に巻いて会場を歩く人も多く、午前11時の配布開始から約2時間でなくなった。他には、大内塗の箸(同200個)、5枚セットのポストカード(同500セット)、英語の観光パンフレット(同750部)、湯田温泉キーホルダー(同200個)、白狐ぬいぐるみ(同50個)、ミニうちわ(同500個)、SLやまぐち号クリアファイル(同500枚)を用意。後日領事館から「日本やアメリカなどのテレビ・新聞等100以上のメディアが取り上げてくれたが、山口市ブースが一番人気だった」といわれたほどの人を集め、フェア終了2時間前の午後3時には、すべての配布物を配り終えた。祇園囃子を聞いたり「ハチマキ」姿を見たりしてブースを訪れた人も多く、「ヤマグチのことは知らなかったが、行ってみたいと思った」「今度日本に行くときの候補地にするよ」などの言葉もかけられたという。
一方、パレード終了後に、浴衣姿で会場を歩いた保存会メンバーも大人気。最初は写真や動画などを一方的に撮影されるだけだったが、途中から「一緒に撮ろう」と呼び掛けを始めると喜ばれ、50人以上のニューヨーカーと「自撮り」した。片言の日本語や「いつかヤマグチに行ってみたい」と話しかけられるなどし、「日本文化だけなく、地方の『ヤマグチ』という地域に興味を持ってもらう一助になったと思う」と、彼女たちも口をそろえる。
保存会メンバーらは翌朝ジョン・F・ケネディ国際空港へ。午後2時(日本時間13日午前3時)前に同空港を出発。約14時間半のフライトで、13日(月)午後5時過ぎに羽田空港に到着。8時半ごろ山口宇部空港に帰着した。
祇園囃子練習スタート
アメリカから帰国したメンバーを含む山口祇園囃子保存会は5月28日、7月20日(土)の山口祇園祭初日での演奏に向け、山口ふるさと伝承総合センターでの練習を開始した。
本番まで、週1回程度の練習を重ねていく。