前回の椿家の手前反対側に、本陣をサポートする脇本陣、旧椿酒屋がある。実はこの家は幕末の志士・久坂玄瑞とかなり深い関係がある。当時の当主椿又七は、久坂の母の実家である生雲の庄屋・大谷家とは親戚だった。久坂は松陰の妹・文と結婚していながら京に愛人・辰路がいた。二人の間に生まれた秀次郎は五歳まで辰路が育てるが、久坂の死後彼女は藩に訴え出て秀次郎は実子と認められ、久坂家を継ぐこととなる。当時の世の常とはいえ、それを知った文の心中や如何に。
秀次郎は成人するまで椿酒屋で養育されたが、それを具体的に示す史料は残っていないようだ。大河ドラマ「花燃ゆ」に辰路が登場したのにはさすがに驚いたものである。
文・イラスト=古谷眞之助