世界保健機構(WHO)は、1970年にたばこ対策に関する初めての決議を行い、1989年に毎年5月31日を「世界禁煙デー」と定めた。その後、日本でも1992年に厚生労働省が世界禁煙デーに始まる一週間を「禁煙週間」と定め、各種施策が講じられている。2024年度は「たばこの健康影響を知ろう!~たばことCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の関係性」を禁煙週間のテーマとし、禁煙及び受動喫煙防止の普及啓発が行われる。
喫煙のリスク
日本では、年間約13万人が喫煙に関連する病気で死亡している。日本人の死因トップのがんは、その原因の約4割が喫煙によるものと推計されている。喫煙者(男性)ががんで死亡するリスクは、非喫煙者と比較して、肺がんが4.8倍、尿路(膀胱・腎盂・尿管がん)がんが5.4倍、咽頭がんが5.5倍になる。また、動脈硬化、脳卒中、糖尿病といった生活習慣病に代表される多くの病気を引き起こすこと、認知症の発症リスクが高くなることなどが明らかになっている。
受動喫煙の影響
受動喫煙とは「喫煙者と同じ空間にいる人が、自分の意志に関わらず、他人の喫煙によりたばこの煙にさらされること」だ。
たばこの煙には喫煙者が直接吸い込む「主流煙」と、火のついた先端部分から立ち上る「副流煙」がある。たばこのフィルターを通らない副流煙には、主流煙より高濃度の有害物質が含まれている。
なお、近年利用者が増えている加熱式たばこや電子たばこは、葉たばこを燃焼しないため副流煙はほとんど発生しない。とはいえ、目に見えない煙霧の一部は吐き出されるため、受動喫煙は起こりうる。
たばこの煙には約5300種類の化学物質、その中でも70種類以上の発がん性物質が含まれており、「受動喫煙による日本人の肺がんのリスクは約1.3倍になる」という報告もある。心筋梗塞、がん、脳卒中、子どもの喘息など、受動喫煙が健康に悪影響を及ぼすことが明らかになっていることから、2019年7月に学校、病院、児童福祉施設、行政機関などが原則敷地内禁煙に。2020年4月には改正健康増進法が施行され、様々な施設での「原則屋内禁煙」義務化がスタートした。山口県でも、2019年10月に改定した「山口県たばこ対策ガイドライン(第3次)」等で、受動喫煙防止といった対策に取り組んでいる。
禁煙するには
自分にあった禁煙方法を選び、計画を立てよう。禁煙する理由を明確にし、禁煙開始日を決めて、周囲にも禁煙を宣言。ライターや灰皿を捨てるなど、「吸いやすい環境」を作らない、ガムをかむ、深呼吸をするなど、「吸いたい」気持ちをそらす行動が求められる。
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禁煙は「予防できる最大の死亡原因」だ。禁煙後1年たつと肺機能が改善し、2~4年後には、虚血性心疾患や脳梗塞のリスクが約3分の1減少する。10年後には肺がんになるリスクが約半分に下がり、20年後にはたばこを吸わない人とほぼ同じになるという報告もある。一人でチャレンジするより、医師と共に取り組めば、より確実に禁煙ができる。禁煙外来だけでなく、内科や循環器科など、さまざまな診療科でも禁煙治療が受けられる。自力でうまく禁煙できないときは、下記に掲載の医療機関やかかりつけ医を受診して、まずは相談してみよう。
※電話番号のクリックで、各医院、施設に電話をかけることができます。