映画「白い牛のバラッド」(2020年、イラン・フランス)が、7月27日(土)に山口市民会館小ホール(山口市中央2)で上映される。時間は午前10時半、午後2時、7時からの3回。「山口でなかなか上映される機会のない良質な単館系新作映画を、自分たちの手で上映・観賞する」ことを目的に活動している西京シネクラブ(大久保雅子代表)が主催する。
2021年の第71回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品された本作は、冤罪(えんざい)による死刑で夫を失ったシングルマザーのミナの姿を通して、死刑執行数が世界2位かつ女性差別的な法律や慣習の残るイランの現状を描き出した。監督は、実生活でもパートナーのベタシュ・サナイハとマリヤム・モガッダムが共同で務め、女優として長いキャリアを持つモガッダムは主演も兼任。反政府的とされる映画の制作・上映が規制されている同国では、政府の検閲によって正式な上映許可が下りず、3回しか上映されていない。
テヘランの牛乳工場で働くミナは、1年前に夫のババクが殺人罪で死刑になり、以来1人で聴覚障害をもつ娘のビタを育てている。今なお喪失感にとらわれている彼女は、裁判所から信じがたい事実を告げられる。ババクが告訴された殺人事件を再精査した結果、別の人物が真犯人だったというのだ。賠償金が支払われると聞いても納得できないミナは、担当判事アミニへの謝罪を求めるが、門前払いされてしまう。理不尽な現実にあえぐミナに救いの手を差し伸べたのは、夫の旧友と称する中年男性レザだった。やがてミナとビタ、レザの3人は家族のように親密な関係を育んでいくが、レザはある重大な秘密を抱えていた。やがてその罪深き真実を知ったとき、ミナが最後に下した決断とは…。
同会の大久保代表は「傑作と呼ばれる作品も多いイラン映画と聞けば、見ずにはいられない。本作は、イスラム教の聖典コーランにある古代の寓話(ぐうわ)『雌牛』を背景にし、『キサース』(同害報復刑)の問題にも触れている。夫が冤罪で死刑になっても『神様のおぼしめし』といわれる理不尽さや女性の生きづらさが描かれている。きめ細かい心理描写に目が離せず、鑑賞後に感想を言い合いたくなる映画だ」と話す。そこで、2時からの上映回終了後には、内山新吾弁護士も参加する感想交流会「なぜ冤罪が起きるの?」も約1時間開かれる。終了予定は5時ごろ。
チケットは、当日会場で販売。料金は、一般1800円、19歳から25歳まで1000円、18歳以下800円。電話予約(TEL083-928-2688)すれば、一般料金のみ1500円に割り引きされる。