山口鷺流(さぎりゅう)狂言保存会結成70周年記念事業「萩藩の能楽 宝生・鷺」が、8月25日(日)午後2時から、洞春寺(山口市水の上町5)で開かれる。
江戸時代の長州藩(萩藩)では、能のシテ方には宝生流と喜多流が、狂言方には大蔵流と鷺流が召し抱えられていた。今回の催しは「江戸時代にここ山口で華やかに演じられていた宝生流と鷺流の共演を通じて、能や狂言を学び、楽しんでほしい」との思いで開かれる。同会によると、「宝生座(宝生流)」は1483年(文明15年)に大内氏館に滞在して、能を演じたとの記録もあるという。
当日は、宝生流シテ方の佐野玄宜、當山淳司、上野能寛の3人と、高安流大鼓方の佃良太郎、大倉流小鼓方の清水和音が出演。山口鷺流狂言保存会のメンバーと共演する。
最初は「萩藩の能楽について」と題されたパネルディスカッション。続いて、宝生流(能)、鷺流(狂言)、囃子(小鼓・太鼓)それぞれのワークショップが開かれる。最後に、鷺流狂言保存会による狂言と、宝生流による能が実演される。
入場料は、一般3000円、大学生以下1000円。小学生以下は無料。前売り券は、YCAM、山口市民会館、C・S赤れんが、洞春寺で購入できる。問い合わせは、同会の新保秀子さん(TEL090-6412-8047)もしくは米本太郎さん(TEL090-6406-0245)へ。
江戸時代に家元制度を取っていた狂言方は、大蔵流と鷺流に和泉流を加えた3流派があった。だが、明治維新による幕府瓦解(がかい)のあおりを受けて、鷺流だけが途絶えてしまった。
山口に現在伝わる鷺流狂言は、長州藩お抱えだった狂言方・春日庄作(しゅんにちしょうさく)が始祖。江戸時代末期に活躍した彼は、明治期には厚狭郡(現宇部市)で農業に従事していた。だが、1886年(明治19年)に野田神社の上棟式が行われた際、神事能に招かれて狂言方として出演。それが縁で、山口・本圀寺(道場門前)に移り、趣味として習いにきた人々に狂言を教えるようになった。これが、現在の山口鷺流狂言の始まりだ。そして、町の人々が相互に稽古をつける「伝習会」によって、鷺流は受け継がれていった。
ところが、大正期には春日の直弟子もいなくなり、急速に衰退。それを憂えた有志は、1954年(昭和29年)に「山口鷺流狂言保存会」を結成した。1967年(昭和42年)には山口県指定無形文化財の第1号にも指定。今年は、保存会結成から70年の節目の年となる。