われ等物事に寛大でありませう。
かくてこそわれ等は幸福でありませう、
そしてもしわれ等の生活に気むづかしい時があつても、
ねえ、ただ二人して泣いてゐませう。
とりとめないわれ等の誓にあどけない優しさをこそ
たぐへませう、われ等相寄る魂は、
世の男達女達から遠く離れて、
われ等を逐(お)ひ退けるもののことをきれいに忘れて。
二人の子供、二人の若い娘のやうでありませう
なにものに耽(ふけ)ることなくなにものに驚異(おどろ)かざるなき。
よごれなきあかしでの下、恕(ゆる)し合ひそれとも知らで
蒼ざめゆかん二人の子供、二人の娘。
【ひとことコラム】フランスの詩人ポール・ヴェルレーヌの詩集『言葉なき恋歌』の詩群「忘れられた小曲」から。第二連〈たぐへませう〉は「一緒にいましょう」という意味で、思いを寄せる人への呼びかけが全篇に綴られています。「時こそ今は…」「湖上」など中也の詩に影響を与えました。
中原中也記念館館長 中原 豊