長門市油谷の楊貴妃、下関市川棚の小野小町と、絶世の美女の墓と伝わるものに事欠かない山口県だが、ここ徳佐にも「美貌と才芸、優雅と勇気」を兼ね備えた人物と称えられる女性の墓がある。源義経の愛妾、静御前である。墓地は市場集落の西側約2キロメートル足らず、十種ヶ峰の麓の片山地区にある。
静御前については今さら詳しく説明する必要もないだろうが、義経と生き別れてからは頼朝に捕まり、北条政子のとりなしで生きながらえるも、義経との間に授かった男子は殺され、剃髪して尼となり放浪したと言われる。そのため他の美人同様、全国各地に墓や伝承が残っている。墓所には静、そして息子、彼女の母の三基が静かに並んでいる。
文・イラスト=古谷眞之助