この本は「塩」を切り口に世界の歴史をたどっていったユニークな作品です。
私たちは今、「塩」を簡単に買うことができますが、昔は大変貴重なものでした。
塩の値うちをよく知っていた古代中国の統治者たちは、塩を政府の専売品とし莫大な財力をつけていきました。それを使って行った事業の一つが万里の長城建設です。
また、塩のもつ殺菌効果を利用して保存食がつくられるようになったことで、遠い国同士でものの取り引きができるようになりました。その流れのなかで、ヨーロッパからアフリカ大陸南端をへてインド洋へとつながる航路も発見され、大規模な物流が可能になっていきました。
地下の岩塩を採掘しているときに見つかったのが、今や私たちの生活に欠かせない石油です。20世紀の初めにテキサス州で大量の石油が掘りあてられたのち、採掘の中心は塩から石油へとかわっていきました。
巻末の、紀元前九七五〇年からはじまる年表をみていると「塩」がいかに経済を左右し、世界を動かしてきたかがよくわかります。
BL出版
文:マーク・カーランスキ
絵:S.D.シンドラー
訳:遠藤 育枝
ぶどうの木代表 中村 佳恵