徳佐盆地に入ると左手に高く聳えているのが標高989メートル、長門富士とも称えられる十種ヶ峰(くさがみね)である。長門風土記によればこの山名の由来は、或る神様が十種の宝物を山頂に埋めたことによるという。
独立峰だけに山頂からの眺めは抜群で、筆者も数度登ったことがあるが、遥か日本海、瀬戸内海も見渡せる人気の山である。そして眼下には広大な徳佐盆地が見下ろせる。その成り立ちについては、50万年以上前に青野山火山群の爆発によって津和野方面への流れが堰き止められると巨大な古徳佐湖が形成され、その結果、逃げ場を失った古徳佐湖の水は長門峡に流れ込んで阿武川となり、徳佐盆地が出来たと考えられている。
文・イラスト=古谷眞之助