このきれいな翅(はね)を持つチョウは、イシガケチョウといいます。みなさんは、この翅の模様は何に見えますか? その名のとおり、石を積み上げた石垣(石崖)模様が由来になっていますが、私にはステンドグラスにも見えました。あみだくじができそうな柄だなと思われた方もいるでしょう。英語ではMap Butterfly(マップバタフライ)と呼ばれ、まるで放射状に幹線道路が伸びるパリの街並みの地図にも見えますね。
実はこのチョウは、地球温暖化により分布を広げています。もともと南方系のチョウであり、分布の北限は南九州でした。山口県ではかつて珍蝶とされていましたが、今ではすっかり一般的な種になってしまいました。林縁部の公園などで見ることができます。幼虫の食草であるイヌビワの木も、県内の様々な地域で見かけます。地球温暖化は既に様々な生き物たちに影響を及ぼしています。
山口県立山口博物館 動物担当学芸員 大森 鑑能