昔、はちみつ色の長い髪をした美しい娘が、働きもののかじ屋の若者と結婚の約束をかわしていました。
ある日娘は、きのこをとって若者に届けようと思い近くの林へ出かけていきました。
ところが、どんなにさがしても、きのこはひとつもありません。とうとう父親から「行ってはいけない」ととめられていた深い森の中へ入っていきました。
そこで出会ったのは、おそろしいおにばば。おにばばは娘をはちみつ色の馬に変え、自分のすみかへとつれていってしまったのです。
魔法の力で仲をひきさかれた二人が、知恵と勇気によって最後はめでたく結ばれる、という筋の昔話は世界各地にありますが、これもその一つで、ウクライナに伝わる昔話です。
絵を描いたのはキーウ在住の画家。家の中の様子やかじ屋の仕事場、刺しゅうを施した民族衣装などが細かく描いてあり、昔話の背景に広がるこの国の文化を味わうことができます。
見開きいっぱいに描かれた結婚式の場面からは、楽師の奏でる音楽が聞こえてくるような気がします。
福音館書店
作:小風 さち
絵:オリガ・ヤクトーヴィチ
ぶどうの木代表 中村 佳恵