山口鷺(さぎ)流狂言保存会(柏木享会長、TEL083-920-4111)は、10月27日(日)午後1時半から4時半まで「結成70周年記念公演」を開催する。会場は山口市指定有形文化財の野田神社能楽堂(山口市天花1)で、入場は無料。駐車場は、野田学園グラウンドに用意される。雨天の場合、会場は山口県教育会館に変更となる。
※雨天が見込まれるため、会場は山口県教育会館になりました。(2024年10月27日追記)
狂言とは、中世の庶民の日常生活を明るく描く、セリフが中心の室町時代に成立した喜劇。能と異なり、ほとんどは面をつけずに演じられ、笑いを通して人間の普遍的なおかしさを描きだしている。江戸時代、家元制度を取っていた狂言には、大蔵流、和泉流、鷺流の3流派があった。だが、幕府瓦解(がかい)のあおりを受け、鷺流だけが途絶えてしまった。
山口に現在伝わる鷺流狂言は、長州藩お抱え狂言方・春日庄作(しゅんにちしょうさく)が始祖。彼は、分家・鷺伝右衛門派に学び、江戸時代末期に活躍。明治時代になってからは厚狭郡(現宇部市)で農業に従事していたが、1886年(明治19年)に野田神社の上棟式で神事能に招かれ、狂言方として出演した。それが縁で、山口・本圀寺(道場門前)に住居を移し、趣味として狂言を習いにきた人々に教えるようになった。これが、現在の山口鷺流狂言の始まりだ。町の人々が相互に稽古をつける「伝習会」によって、鷺流は受け継がれていった。
ところが、大正期には春日の直弟子もいなくなり、急速に衰微。それを憂えた有志は、1954年(昭和29年)年に「山口鷺流狂言保存会」を結成した。1967年(昭和42年)には山口県指定無形文化財の第1号にも指定。現在は、米本文明氏が山口県指定無形文化財技術保持者に指定されている。
記念公演の演目および出演者は次の通り。(敬称略)
- 「神鳴り」岡藤清明(雷)、岡藤弦一(医者)
- 「末広がり」土村廣隆(大名)、米本次郎(太郎冠者)、升井洋至(通り)
- 「首引」森脇亮(鎮西縁の者)、伊藤隆(親鬼)、新保秀子(姫)、岡村繁・池田幸枝他(眷属)
- 「颯果」米本文明(大名)、米本太郎(太郎冠者)、鈴木太龍(すっぱ)
「神鳴り」を演じる岡藤兄弟は、同会が後継者育成などを目的に開いている「こども狂言教室」で力をつけてきた。兄の弦一さんは中学2年生で、弟の清明さんは小学5年生。2人とも、今回が本公演デビューとなる。
「保存会結成から70年、春日庄作から受け継いだ芸を、今日まで多くの人たちからの支えで伝承することができた。これからも永く伝えていけるよう、伝承活動に励みたい」と同会。
能楽堂見学会
関連イベントとして、「野田神社能楽堂の舞台裏見学会」も開かれる。「舞台の秘密」などの解説を受けながら見学できる、またとない機会だ。事前予約制。
開催日は10月13日(日)と20日(日)で、時間は両日とも午前10時、午後1時、午後3時から1時間程度。参加費(資料代)は500円で、定員は各回15人(先着順)。
申し込みは同会(FAX083-920-4112、taroyonemoto@yahoo.co.jp)へ、氏名、住所、電話番号、メールアドレス、希望日時(第2希望まで)を伝える。