この供養塔に辿り着くにはガイドさんにお願いしないと絶対に無理である。それだけに一見の価値はある。津和野三本松城城主吉見隆頼は大内義隆の姉を妻にした吉見氏の第十代で、山口滞在中何者かに殺害された。彼の供養塔と伝わるものは市場集落から市場川沿いに1キロメートル余り谷に入った所にある。
供養塔は高さ約90センチメートルで、江戸時代の地誌・防長風土注進案には「御戒名書附無御座候」と記してあるが、供養塔には「榮林源椿大居士」と鋭く彫られている。また裏側には「天文九年十月十九日吉見三郎」とも刻まれている。三郎は隆頼の通称だが、近くの恵長寺にある位牌には「天文八年九月二十七日没」とあるそうで、何ともよく分からない。
文・イラスト=古谷眞之助