写真集「かけがえのない地球」を開く。アメリカ、コロラド州デンヴァー郊外、北緯39度44分、西経104度59分の住宅地。張り巡らされた道路に沿って住宅がびっしり並んでいる。赤い屋根と青い屋根の違いはあれど、同じ敷地幅に同じ三角屋根の家がずらり。ひいふうみいよう、単調過ぎて何度数えても間違う。屋根の下ではそれぞれの不幸で幸せな人の犬の猫の生活が営まれているのだろう。住み始めた最初は自分の家に帰るのに迷ってしまう。天道虫のような車が走っている。車を数えようとすると頭はくらくら虫眼鏡を持つ手が震える。デンヴァーは、拡大を続ける都市郊外の典型的な町だ。住みたいか?
チリ・サンラファエル湖に流れ込む氷河。南緯46度38分、西経73度60分。氷は青みかがったさざ波のような襞を作り止まっているように見えるが、時間をかけて流れ下っているのだ。写真集の初版が2004年。今から二十年前になる。この氷河は現在どうなっているか。急速な地球温暖化によりサンラファエル湖にのみ込まれているだろう。
二十年前、ニュージーランドで見た氷河の先端は、土をえぐり泥水となり細く流れていた。中に氷河の欠片が転がっていた。触ったら冷たかった。今は荒地になっているらしい。