秋らしくなりましたね。夕食はなんにしましょうか。肉じゃが、なんぞはどうかしら。じゃが芋を剥きましょう。食事がすめば自由時間です。夜はベッドの上で彼らが待っています。
古今東西の名作小説は、ややこしいので理解するのに頭は熱をもちます。折角の秋、そんなものは読みたくない。面白い本が読みたい。よってベッドで読むのは、池波正太郎の本です。
捕り物が好き! 数多の小説の中で彼の作品に惹かれるのは何故か?
池波氏は、陽だ。明るい。解説によれば「善と悪、富と貧、男と女、複眼的な相対感覚。酸いも甘いも熟知している大人の視線、円熟したまなざし」。これは私が幼い時に大人の膝の上に抱かれた時に感じたものだ。私のお尻の下は彼らの体温でぽかぽか。お化けが来ても何が襲ってきても私は安泰なのだ。身体の底に残っている幼い時のあの安心の感覚。
秋の夜長、嫌なことがあった日、また、楽しい日の終わりにも池波氏の小説を読まれるのをお勧めする。
私の今夜のお供は「鬼平犯科帳」。読み始めるとすぐに、小さな平蔵が私の腹に飛び乗る。私が、早く行け、と目で合図すると頷き周囲を警戒しながら本の中に入り盗賊と闘うのです。次に密偵五郎蔵、おまさ、彦十が身を低くして私の足を駆け上る。