1970年代後半、防府出身の画家・吉村芳生(1950-2013)は東京の国立市に住んでいた。この作品は、その頃の国立の風景を描いたものである。
ただし、本日紹介しているのはその中央付近のみ。面積にして全体の約1000分の1、正確にいうと70400分の70でしかない。
なぜ、そんな正確な数字をお示しできるかというと、全体が5ミリ四方の正方形70400個(縦320個×横220個)でできているから。
だんだん見えてきたでしょ? 斜線の数によって濃度の違う、70個の小さいマス目が。
当然のように、残りの部分もまた、濃度の違う5ミリ四方の正方形70330個でできている。
濃度の違いは10段階。つまり、吉村芳生は5ミリ四方の正方形毎に斜線を引いて濃淡を操りながら、70400個のマス目で全体を描いているのである。
本人曰く、「誰にでもできる単純作業」らしい・・・。
ぜひ実物をご覧ください。
※「吉村芳生―日々、写し続けて―」(12月25日まで)展示作品より
山口県立美術館 河野 通孝