「昨日、白玉ぜんざい作ったんよ」「へぇー、自分で?」「そうよ。白玉粉を丸めて、小豆も煮て」「手をかけたんやね」「朝夕はもう寒いって感じやろう、だから温かいぜんざいよ」。
昼下がりのバスに乗ったら、後ろから美味しい話し声が聞こえてきた。ちらり横目で見たら、私と同年代か、白黒まだらの頭髪の品の良い老女が二人。
白玉か、しばらく食べてないなぁ。小さな丸い白玉。食べたい! 小指をやんわり噛んだような歯応えとつるりとした喉ごし。食べたい。食べたい。白玉ぜんざいを作ろう。
スーパーの前でバスを降りて冷凍食品売り場に一直線。私はバスの女性のように白玉粉をこねて茹でて団子を作らない。誰かが上手に作ってくれた白玉を使わせていただく。もちろん小豆もそうだ。これは甘さおさえた小豆缶。
白玉があったにはあったが、なんと一キロの大袋しかない。巨大な真珠のような白玉がドンと百八つ。これは煩悩の数ではないかしら。貧(とん)・瞋(しん)・愚・痴・慢・・・後は忘れた。七十八歳にもなって貪り食っていいかしら? いいさ。冷凍しとけばいつでも食べられる。毎夜変化する月を見て団子を食べればいいんだ。毎日お月見。一キロの袋を抱えてレジへ。ウキウキの私。