山口市を拠点に活動する講談師・神田京子さんによる「神田京子大独演会in山口」が、2月24日(月・振休)午後1時半から、KDDI維新ホール(山口市小郡令和1)で開かれる。
「講談を通して、閉塞(へいそく)感をとっぱらい、世の中がパーっと明るい方向へと進むためのお手伝いがしたい!」と、伝統話芸・講談の力を信じる神田さん。昨年6月から、新1万円札の"顔"となった渋沢栄一を題材にした新作講談「渋沢栄一伝~繰り返さない明日へ」を、1万円札にちなみ「1万人に伝えるプロジェクト」に取り組んでいる。
渋沢のことを「もっと世の中が良くなるようにと願い、行動した人。行き詰まった現代社会のもつれをひもとくのに必要な感覚、『慈悲の心』を大切にし、発展の裏には必ず犠牲が伴うことを心の底から痛感し、経済発展と社会事業はセットであり、世の中はバランスが大切と、晩年はつえをつきながら若者たちにも叱咤(しった)激励をし続けた」と評して、「その生きざまを届けたい」と講談に仕立てた。1月末までに伝えた人数は、8290人だ。
もう一つの演目は、デジタル絵巻講談「鳥羽伏見の戦いと錦の御旗」。戊辰(ぼしん)戦争を描いた唯一の絵巻とされる、京都・仁和寺所蔵の「戊辰戦争絵巻」を、2020年にデジタル化およびカラー化したデータを使用する。近代日本へと意識が変化するきっかけとなる戊辰戦争の初戦「鳥羽伏見の戦い」の模様を、山口市で製造された錦の御旗も登場させつつ、当日の記録(絵巻)を映写しながら読む。
販売中の前売り券(全席指定)は、A席(1階)5000円、B席(2階)3000円。チケットぴあ、KDDI維新ホール、YCAMで購入できる。当日券は、各500円高。
また、「多感な時期に、渋沢の青春時代のエピソードを聞いてほしい。どんな偉人も10代・20代の頃は、何から始めていいか分からずモヤモヤしていたんだということを知るだけでも宝になるはず」と、小学6年から高校3年までの生徒は、B席に無料招待する。申し込みは、応募フォーム(https://docs.google.com/forms/d/1pbv9yE9Lyd8-r2A37N3M7kDjS6bWfhKwCttzmVj_frs/viewform?edit_requested=true)から。同伴の保護者は、1人3000円で入場できる。問い合わせは、実行委員会(TEL080-3884-9296)へ。
本公演は、神田さんの芸歴25周年、そして山口市への移住5年を記念しての開催でもある。神田さんは「『どこに住んでもできるんだ!』と、移住促進も開催テーマに掲げている。大都会に住まなくても『やりたいことはできる!』と、暮らしやすい山口という土地から発信したい。満席の会場で、言葉に力を宿らせたい」と来場を呼び掛けている。
神田さんは、1977年岐阜県美濃市生まれ。日本大学芸術学部在学中の1999年に二代目神田山陽に入門し、山陽の死去後は神田陽子に師事。2005年二ツ目、2014年真打ちに昇進した。スタンダードな講談会を重ねる一方で、音楽とコラボする「講談+α」の公演や、「金子みすゞ伝」など自作講談にも取り組んでいる。2020年2月、東京から山口市に移住。2021年には、第76回文化庁芸術祭大衆芸能部門優秀賞と岐阜県芸術文化奨励賞を受賞した。夫は詩人・桑原滝弥で、1児の母。