野坂御番所から国道9号線を離れて左側の道を1キロ弱進むと、そこが津和野藩との国境、野坂峠である。峠には一里塚が立てられており「是より小郡津市へ拾弐里弐拾八町、是より萩松本迄拾里」と記されていた。さらに藩主が御国廻りの際に休憩する駕籠建場も設けられていた。峠の真ん中には立石があって、それは「野坂駕籠建場絵図」に一里塚と同等の大きさで明記されているが、どういう意味合いのものだったのかは不明。付近は明治期に道路拡張や掘り下げを行ったため当時の雰囲気が残されていないのが残念である。
長州藩の石州街道は野坂峠までであるが、最終回では野坂峠から津和野までの下りと幕末の長州藩と津和野藩との関係に触れたい。
文・イラスト=古谷眞之助