毎年3月24日はWHO(世界保健機構)が定める「世界結核デー」。各地で結核の予防に関する啓発活動が行われる。結核は、かつては「不治の病」と恐れられ、1970年代後半まで日本人の死因ワースト10にも入っていた。2021年に日本は10万人あたりの結核患者数が10人を切る「低まん延国」となったが、国内では年間約1万人の新たな患者が報告され、約1600人が死亡。「昔の病気」ではなく、まだまだ身近な感染症といえる。近年は高齢者だけでなく、外国出生の若者の感染増加や、結核治療薬に使う抗生物質が効かなくなる「薬剤耐性結核」など、新たな課題にも直面している。
世界結核デーとは
細菌学者ロベルト・コッホが1882年3月24日に結核菌の発見を発表したことにちなみ、1997年にWHO総会で「世界結核デー」に制定された。毎年WHOによって3月にテーマが発表され、2025年は「Yes ! We Can End TB : Commit, Invest, Deliver(私たちは結核をなくすことができる:約束する、資する、実現する) 」が掲げられた。
どのように感染?
結核は感染症のため、発病して病気が進行すると、咳(せき)やくしゃみなどによって空気中に飛沫(しぶき)が飛び散るようになる。それを他の人が吸い込むことによって感染する(空気感染)。人の体に入るまで増殖できず、食器や衣類から感染することはない。また、結核菌を吸い込んでも必ず感染や発病するわけではない。高齢や合併症のために免疫力が低下すると、発病することもあるので注意が必要だ。
典型的な症状は?
結核菌に感染し、発病すると、初期のうちはカゼに似た、痰(たん)、微熱、寝汗、だるさなどの症状が出る。さらに病状が進むと血痰(けったん)がでたり、喀血(かっけつ)したりする。
県内の感染状況は?
毎年約120人が結核を発病しており、2023年の新登録結核患者数(1月1日から12月31日までの1年間に新規に結核患者として保健所に登録された人数)は114人。70歳以上が7割以上を占めている。
予防するには?
市町で行っている住民健診や職場などの健康診断をすすんで受け、早期発見に努めることが重要。特に、事業者や学校・施設の長が行う定期の健康診断を受けていない人で、65歳以上の人は、市町村長が行う「結核定期健康診断」を受けることが感染症法で義務付けられている。また、幼い子どもがいる場合は必ず生後1歳までにBCG接種を受ける必要がある。万が一子どもが結核に感染しても、重症化を防ぐことができる。
治療するには?
通常、薬を医師の指示通りに服用することで治療できる。標準的な治療期間は6~9カ月。自己判断で服用を中断すると、結核菌が薬に対して抵抗力(耐性)を持ち、薬の効かない結核菌(耐性菌)になる可能性がある。医師の指示に従い、決められた期間服薬を続けることが大切だ。
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初期の症状は目立たないことが多いので、特に高齢者は気づかないうちに進行してしまうことがある。結核を発症しても、早期に発見できれば重症化を防ぐだけでなく、周囲への感染拡大を防ぐことができる。
咳(せき)や痰(たん)が2週間以上続いたり、微熱や体のだるさが続いたりする場合は、下記に掲載の医療機関などを早めに受診しよう。
※電話番号のクリックで、各医院、施設に電話をかけることができます。