毎日、毎日、卵を割って料理をする。料理は得意ではないので、フライパン一つで簡単にできる卵料理は良く作る。朝は刻みネギを入れた卵焼き、昼はほうれん草と一緒に炒り卵、夜は玉ねぎを抱かせたオムレツ。
真っ白、薄いピンク色、緑がかった白、卵はいろんな色をしている。表面は、ザラザラしたりつるんとしているが、どれも静かに落ち着いている。
毎日卵を割る。殻を見ていると愛着が出てくる。黄身を守る使命を果たした殻には哀愁が漂う。きれいに半分に割れた殻は嬉しそうに頬を染める。歪に割れた殻は恥じらって俯く。それを掌で包んで揉んで粉にする。掌に刺さる殻の存在を味わう。心地よいざらつきに酔う。
きっちり半分に割れた殻をセロテープでくっつけ元の楕円に戻し、そこに黒のマジックインクで蜘蛛の巣を描く。昨年秋に窓に蜘蛛が大きな巣を張った。その精密な糸の図形に魅せられ、長くそのままにしていた。
卵に巣を再現する。黒い線を縦横に引き殻に生き生きとした巣を描く。その迷路のような線上に模造ダイヤや赤いルビーを貼り付け、金銀のシールを纏わせたら、雑誌で見たエルミタージュ美術館のイースター・エッグのように豪華に輝いた。
今日も卵を割る。