この本は、世界各国に伝わる個性豊かな織物のすばらしさを伝えたい、という作者の思いから生まれた作品です。
カイコのまゆから絹糸ととる方法をみつけたのは、古代中国の人たち。その糸を豪華な絹織物に仕上げていく技は、何千年ものあいだ、大事な秘密とされてきました。
ペルーの山でくらす人びとは、織り機をからだにくくりつけ、もう一方の端を木に結んで、大地と心をかよわせながら布を織りあげていきます。
北米やカナダに住むセイリッシュの人たちの布に織りこまれた色や模様には、不思議な力がそなわっているといわれています。
「はた織りの音が うたうのは/手から 手へと わたるわざ/人のつながり そのぬくもり/これまでも そして これからも/世界じゅうでつづく 人びとのくらし」
織物をめぐるさまざまなものがたりは、おばあさんが孫娘に語り伝える形でつづられています。
この本そのものが、言葉をたて糸に、絵をよこ糸にして丹念に織られた一枚の織物のように思いました。
ほるぷ出版
文:ケイティ・ハウズ
絵:ディナラ・ミルタリポヴァ
訳:中野 怜奈
ぶどうの木代表 中村 佳恵