「山口でなかなか上映される機会のない良質な単館系新作映画を、自分たちの手で上映・観賞する」ことを目的に活動している「西京シネクラブ」(大久保雅子代表)は、4月26日(土)に「ある一生」(2023年、ドイツ・オーストリア)を上映する。会場は山口市民会館小ホール(山口市中央2)で、上映時間は午前10時半、午後2時、7時からの3回。
映画の舞台は、1900年頃のオーストリア・アルプス。孤児の少年アンドレアス・エッガー(イヴァン・グスタフィク)は渓谷に住む、遠い親戚クランツシュトッカー(アンドレアス・ルスト)の農場にやってきた。だが、農場主にとって孤児は安価な働き手に過ぎず、虐げられた彼にとっての心の支えは老女のアーンル(マリアンヌ・ゼーゲブレヒト)だけだった。彼女が亡くなると、成長したエッガー(シュテファン・ゴルスキー)を引き留めるものは何もなく、農場を出て、日雇い労働者として生計を立てる。その後、渓谷に電気と観光客をもたらすロープウエーの建設作業員になると、最愛の人マリー(ユリア・フランツ・リヒター)と出会い、山奥の木造小屋で充実した結婚生活を送り始める。しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。第二次世界大戦が始まり、エッガーも戦地に召集。ソ連軍の捕虜となり、何年もたってからようやく谷に戻ることができた。そして時代は過ぎ、観光客で溢(あふ)れた渓谷で、人生の終焉(しゅうえん)を迎えたエッガー(アウグスト・ツィルナー)に、過去の出来事がフラッシュバック。アルプスの光景を前に立ち尽くす…。
2014年に刊行された、ローベルト・ゼーターラーの原作小説は、世界40カ国以上で翻訳され、160万部以上発行。世界的に権威のあるイギリスの文学賞・ブッカー賞の最終候補にもなった。本作は、原作に忠実でありつつ、美しい情景と共に映画化された。主人公のエッガーは、80年にわたる激動の人生を、3人の俳優が時代ごとに演じている。
チケットは、当日会場で販売。料金は、一般1800円、19歳から25歳まで1000円、18歳以下800円。電話予約(TEL083-928-2688)すれば、一般料金のみ1500円に割り引きされる。
大久保代表は「人間の幸せとは何かを問いかける、ベストセラーの映画化。雄大で美しくも過酷なオーストリア・アルプスの自然、農業も建設も人力で営まれていた20世紀前半の暮らしの再現、映像美を楽しんでほしい」と話している。