げんごろうさんはふしぎなたいこを持っていました。片側をたたきながら「はな たかくなれ」というと鼻が伸び、反対側をたたきながら「はなひくくなれ」というと鼻が縮むのです。このたいこは人を喜ばせるためにしか使ってはいけないことになっていました。
ところがある日、げんごろうさんは、人間の鼻がどのくらい伸びるものかためしてみたくなり、たいこをたたき続けました。
「どんどこ どんどこ」鼻が重くて立っていられなくなりましたが、それでもまだまだ「どんどこどんどこ」。とうとう鼻は天まで伸びていきました。
一方天国では、天の川の橋の工事の真最中。大工さんはげんごろうさんの鼻を棒と勘違いし、橋の欄干にくくりつけてしまいました。
異変に気付いたげんごろうさんが鼻を縮めようとたいこをたたいたところ、大変なことに!
琵琶湖にいる「げんごろうぶな」のいわれを説いた昔話。他にも二篇のおはなしが入っています。墨絵風のユーモラスな絵が、おはなしのおもしろさを一段とひき立てています。
(ぶどうの木代表・中村佳恵)
岩波書店
文:石井 桃子
絵:清水 崑