この本は、ノーベル文学賞受賞者のボブ・ディランが自分の息子に向けて作った歌を、第6回中原中也賞を受賞した詩人のアーサー・ビナードが日本語に訳し、ディランを敬愛するポール・ロジャースが絵をつけた作品です。
ディラン自身が「意気込んだわけじゃなく、自然にうかんできて、そのままできあがった。」と言っているように、歌詞には子どもの成長を見守る父親の思いが軽やかにもりこまれています。
「きみが 手をのばせばしあわせに とどきますように」「背を まっすぐのばして いつでも 勇気がもてますように」
絵の中の少年は、あこがれのシンガーソングライターからギターをプレゼントされます。そしてこの歌詞の内容どおりに成長し、キング牧師らとともに平和の大切さを歌で伝えていくのです。
ディランゆかりの人や場所が随所に描かれ、そこから彼の人生を辿れるのもこの本の面白さ。
「フォーエバー・ヤング」を「はじまりの日」と訳すなど、訳者のすばらしい日本語のセンスも味わってみてください。
(ぶどうの木代表・中村 佳恵)
岩崎書店
作:ボブ・ディラン
絵:ポール・ロジャース
訳:アーサー・ビナード